徳之島の北東部に位置する金見集落は、集落全体が国立公園の中にあり、注目を集めている地域の一つです。
目の間には色鮮やかな魚たちが泳ぐ紺碧色の海、背後は天然記念物のアヤミノクロウサギが暮らす森に囲まれています。
小さな集落ですが、徳之島の良い所がギュっと詰まっている場所です。
そんな金見集落の魅力をたっぷりと感じられるのが金見まち歩きエコツアー。金見集落の観光スポットを地元を知り尽くしたガイドさんと巡ります。
案内してくださるのは、認定ガイドで「金見あまちゃんクラブ」の代表を務める、元田浩三さん。
金見で生まれ育ち、高校と大学を島外で過ごした後は徳之島にUターン。金見の自然、文化、歴史などなんでも知っている金見のプロフェッショナルです。
金見町まち歩きエコツアーに出発!
集合場所は金見公民館。今回のツアーには、未就学児から高齢者まで18人が参加しました。
近所に住む子供たちから、転勤で徳之島にやってきた人、長年徳之島で暮らしている人、最近徳之島に移住した人など環境はさまざまです。
全員が輪になり自己紹介をしてから、エコツアーがスタートしました。
はじめに案内してくださったのは、観光地図にもガイドマップにも載っていない何の変哲もない家です。
元田さんの後ろに建っている建物が道路より一段下がっているのが分かりますか?
金見集落は徳之島の北東部に位置しているので最も台風の影響を受けやすい場所。
まだ現在のように丈夫な住宅がなく、茅葺屋根の家が多かった時代には台風の被害が最小限に住むように一段下げて住宅を作ったそうです。
昭和40年代までは、茅葺屋根の家が多くあったそうで、当時の金見集落の写真を見せながら説明くださいました。このような話が聞けるのも地元ガイドさんならではですね。
コーネィンヤマ
続いてやってきたのは「コーネィンヤマ」と呼ばれる金見集落のイビナガシ(水神様)が祀られている場所です。
アコウの木の下にはフーゴと呼ばれる湧き水が出ている場所があります。
金見集落には川がないので、かつて水道のなかった時代にはこの湧き水が生活用水として使われていました。
写真に見えるくぼみのある石は、髪の毛を洗う用の石です。シャンプーがない時代には、赤土をシャンプーの代わりにしてこの場所で髪の毛を洗っていました。
鳥居をくぐると大きなガジュマルの木が迎えてくれます。ガジュマルの木の下には、ケンムンという子どものような姿をした妖怪が住んでいるという言い伝えがあるのだとか。
また、クーラーなどがなかった時代には、ガジュマルの木陰は休憩場所としていつも人が集まっていたそうです。
エコツアーで訪れたときに、コーネィンヤマの周りの草取りをしている地元の方がいらっしゃいました。
徳之島では草むらにハブがいる可能性が高いので、いつ観光客が訪れても安全にまち歩きができるように名所の周りの草取りをしてくれていたのです。
地元の方が自分の住む地域を大切にしている気持ちがとても伝わってくる一幕にも出会えました。
スンコ(上の泉)
こちらは「スンコ」と呼ばれる泉です。こちらも水道が普及する前の時代までは、生活用水と使われていた湧き水です。
今は使えないようにフタがされているのですが、中を覗いてみると……。
小さな魚がたくさん泳いでいました。
水も透き通っていてキレイです。今は使われていませんが、野菜を洗ったり洗濯には使えるんじゃないかな?と思いました。
金見崎ソテツトンネル
次のポイントは徳之島を代表する観光地の一つ「金見崎ソテツトンネル」です。樹齢300年~350年と言われているソテツが長い時間をかけて作り出した、自然のトンネルです。
ソテツトンネルの中は南国ムード満点!亜熱帯のジャングルに迷い込んでしまったかのような、とても日本とは思えない風景が続きます。
トンネルの中では元田さんがソテツの雄花と雌花の違いを写真で見せてくださったり、ソテツの名前の由来のクイズを出してくださったり、分かりやすく楽しく教えてくれました。
「ソテツは葉と花が一年おきに咲く植物」「戦時中の食糧難のときにはソテツの毒を抜き、おかゆにして食べた」などの興味深いお話も。
そのほかにも自生するツワブキやクワノミの食べ方、葉を使ったお皿の作り方などを実際の植物を見ながら教えてくださいました。
金見崎展望所
ソテツトンネルを抜けると目の前に現れるのが、金見崎展望所です。
ここからは太平洋と東シナ海の二つの海が見渡せます。
写真右手が太平洋。写真左手が東シナ海です。晴れた日にはトンバラ岩もキレイに見えますよ!
ソテツトンネルの中は風があまり通らなかったので、展望所で受ける海風が心地良い!疲れが一気に吹き飛ぶほど爽快な気分になれます。
ビッキャの物語
ソテツトンネルを歩き、展望所の階段を上がってずいぶんと汗もかいてきたので、展望所を下った所にある「ジビエカフェとうぐら」のテラスでお茶休憩。
休憩中も元田さんが金見集落に伝わるビッキャ(かえる)のお話をしてくださいました。
1回目は金見の方言で話してくださるので、内容の半分も分からなかったのですが…。2回目は標準語でお話してくださいました!
とってもおもしろいお話なので、どんなお話なのかは参加したときまでのお楽しみにしてくださいね。
金見海岸へ
ここからは地図には載っていない道を通って金見海岸へ向かいます。この道はガイドツアーに参加しないと知ることができない特別なルートですよ!
植物の生い茂った細い道を歩いていくと、そこには…。
広がる水平線がありました!
右も左も180度以上の海が見渡せます。うわぁ~!すごーい!思わず参加者からも声があがります!
しかし、驚くのはここからです。
この先にある崖を1本のロープを使って下っていくのです。
少し足元が滑りますが、慣れてしまえば大丈夫。子どもから年配の方まで、みんな無事に降りることができました。
ウミガメの産卵について
金見海岸はウミガメの産卵場所でもあります。6月頃に産卵にやってきて、7月頃にはウミガメの赤ちゃんになり海に帰っていくそうです。
海岸に降りると浜辺にピンクのリボンが付いた木の棒が刺さっていますが、これはウミガメが産卵した場所を示しています。
この下にウミガメの卵が埋まっているので触らないでくださいという合図です。
メランジ堆積物&トゥッカ見学
海岸も台風や潮の影響で来るたびに砂の量や石の位置が変化するので、毎回違った場所を歩いているような感覚になります。
中国大陸と繋がっていた時代からある「メランジ堆積物」が作り出す風景も、また違った姿を見せてくれました。
この穴から望む朝日はとてもキレイなんですよ!と見せてくださった写真は見事!
「以前朝日を見に来たときに、グリーンフラッシュが見えた!」と教えてくださる参加者の方もいらっしゃいました。
出発から到着までは約3時間、ここで見所満載の金見エコツアーは終了です。
ガイドさんがいなければ見過ごしてしまうような説明が盛りだくさんの金見エコツアーへ、ぜひ参加してみてください。
金見町歩きエコツアーの料金と申し込み方法
金見エコツアーは通年開催しています。対応は1ガイド上限6名まで。料金は所要時間や人数により異なります。